テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
【Hirona Side】
「すみませんっ!次からは頑張ります」
珍解答が並んだ数学の解答用紙を苦笑いをしながらそっと隠す。
数学の先生に提出した数学の補習での小テストが返ってきたのだ。
先生も呆れた顔をして私を見つめている。
「夏村、期末考査で赤点取ったら冬休みに補習だからな」
先生に去り際に捨て台詞を残されて、私は呆然とする。
冬休みは短い上にShootingのテレビの観覧に忙しい。
それなのに補習なんてやってる暇なんか無いよ。
昇降口に降りてくると、壁に寄りかかって携帯をいじっていた紗乃を見つける。
手を振りながら近づこうとして、私の足はぴたりと止まった。
紗乃の前に現れたのは、多分、今の紗乃の彼氏。
2人で笑い合いながら、何か話している。
その瞬間に携帯の通知音が鳴る。
紗乃からだ。
『ごめん。今日廉太が部活休みみたいだから一緒に帰るね(汗)また明日!』
そっかぁ。
顔を上げると、彼氏と手を繋ぎながら歩く紗乃の後ろ姿が見えた。
いつもクールで現実主義な紗乃。
こんなに乙女な顔もするんだね。
ああやって手を繋いだり、一緒に帰ったり、雨の日は同じ傘に入ったり。
そういった、普通のカップルでは当たり前のことをしてみたい。
「それなら早く現実的な彼氏を作れ」と紗乃が説教をする顔がすぐに頭に浮かんで、私はため息をついた。
1人ぽつんと残された私は、いつもと同じように電車に揺られ、家の最寄り駅まで帰ってきた。