テレビの向こうの君に愛を叫ぶ
「あーあ」
駅から出ようとした私の足は、滝のように降る雨に遮られた。
大きな音を立てながら、地面を叩きつける雨をただ眺めながら、私は肩を落とす。
今日はついてない。
紗乃もいないし、雨は降る。傘もない。
「ぼっちかよ」
雨音の隙間から聞こえた声に私は振り返った。
そこに立っていたのは全身びしょ濡れのいくまる。
それなのに、片手には透明のビニール傘を持っている。
いつもの少し気怠げな眼差しでこちらを見ていた。
「いくまる…?なんで傘持ってるのにびしょびしょなの?」
いくまるはすんっと鼻を啜りながら傘を開き、私を手招きした。
「別にいいじゃん。どうでも」
いくまるが傘を開くと、ハラリとタグが垂れる。
もしかして…わざわざ買ってきてくれたの?