スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
ポニーテールにリボンのカチューシャをつけた西園寺さんは、切りそろえられた前髪の下にある黒目がちな瞳を哀しそうに揺らした。
「社内にいるかもしれないなんて……高梨さん、確か一人暮らしですよね?」
大丈夫ですかと聞かれて、私は一瞬どう答えればいいのか迷った後「今は友人の家にお世話になっているので」と話す。
「それなら良かったです。早めに解決させたいですね」
親身になって相談に乗ってくれる西園寺さんは、何かあれば協力するから遠慮なく言ってくださいと天使のように柔らかく微笑んだ。
「ありがとうございます」
伝えデザートのシャーベットを口に運ぶ。
この日、私たちは同じ歳なんだから敬語はやめにしようと約束し、また近々食事でもしようと言って別れた。
駅前でタクシーに乗り込んで、目を閉じる。
本当に、早く解決させなくては。
今より悪い状況にならないうちに、早く。