スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
冷蔵庫の中には村瀬さんお手製の豆乳の海鮮ポトフと野菜スティックときのこのマリネが入っていて、私はそれを取り出すと温めなおしてありがたくいただく。
優しい味のポトフを食べながら、ふと、壁にかかっている時計を見れば、時刻は22時をまわっていた。
……識嶋さん、まだ縁談相手と会ってるのかな。
意外と好みのタイプで話が弾んでる、とか。
だとしたら、私はお払い箱になるのだろうか。
……おかしい。
最初は嫌だった役なのに、嘘の役なのに。
「……寂しい、な」
識嶋さんがいないのは、彼に必要とされなくなるのは、寂しい。
食事を終えて食器を洗い片付けて。
入浴も終えて、やるべきこともなくなり身軽になって部屋のベッドで横になっていた時だ。
リビングの方から物音が聞こえて私は体を起こした。
きっと、識嶋さんが帰ってきたのだ。
挨拶だけしに行こうかと迷っていると、部屋の扉が二度ノックされて。
「いるか?」
くぐもった識嶋さんの声に私は「はい、どうぞ」と返してベッドに腰掛ける。