スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


部屋に入ってきた識嶋さんはすでにジャケットを脱いでいて。


「おかえりなさい。お疲れ様です」

「ああ、お疲れ」


ネクタイを緩めながら返事をした。

そして。


「とりあえず、恋人がいることは先方に伝えておいた」


少し疲れた声で今日の報告をしてくれる。


「納得してもらえたんですか?」

「いや、先方の両親にじっくり選べと言われた」

「それはまた上手ですね……」


怒るでも諦めるでもなくそんな風に言われては、識嶋さんも両親のメンツを考慮したら強く反発することもできないだろうし。

むしろそれを見越して言われたのかもしれないと思うのは勘繰りすぎだろうか。

識嶋さんは一人掛け用の革のソファーに腰を下ろし「こっちから打って出る必要もあるか」と零す。


「何ですか、その時代劇の戦に出るみたいな言い方は」


まあ、識嶋さんにとっては戦に出るイメージなのかもしれないけど。


< 108 / 202 >

この作品をシェア

pagetop