スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「それで、例えば何を?」
「別れそうにないことをアピールし続ければいい。もしくは、俺と結婚したくないと思わせるかだな」
それならあなたのきつい言葉が一番効きますよ、と言いたかったけれど、よく考えるとプライベートの識嶋さんの方がどこか柔らかい気がするので、私のように順応してしまわれるかもしれない。
だって、ほら、今も嫌じゃないの。
彼が足を組んで考え悩んでいる姿も。
顎にあてた長い指も。
憂い伏せられた長いまつ毛も。
普段のきつさなんて帳消しにできてしまうほど魅力的で。
「よし、機会があればどちらも試すか。今度会うことがあれば高梨、お前を連れていく。頼むぞ」
きっと、相手の女性も許してしまう。
首を縦にふった私に、識嶋さんは用は済んだとばかりに立ち上がった。
そして、閉めようと扉に手をかけるたかと思えば足を止めて。
「ストーカー、明日も用心して過ごせよ」
私に気遣いの言葉をくれる。