スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-

Floor 16



そういえば、彼が酔っているところを見たことがない。

もうすぐ日付が変わる金曜日の深夜。

私はリビングにある大きなテレビでお笑い番組を観ながらそんなことを考えていた。

なぜそんなことを考えるのかというと、今夜、識嶋さんは相馬先輩と飲みに行っているからだ。

テレビに映し出された女芸人がセクシーなダンスで笑いをとる中、普段ここで過ごしている識嶋さんを思い返してみる。

このソファーでコーヒーを飲んでる姿はよく目にしていたけど、お酒を飲んでいるのはほとんど見たことがない。

本当に、ほんの数回のみだと思う。

それもワインをグラス一杯とか、度数の弱いお酒を二杯、とか。

でも酔っている感じではなかったし、ほろ酔いという雰囲気でもなかった。

つまり、普通かそれ以上は強いということがおおよそ予想される。

真面目な人だし、酔いつぶれるまで飲んだりしないんだろうな、なんて考えていたところに、玄関が開く音がして。

私はソファーで膝を抱えた体勢のまま、視線をリビングの扉にうつした。

……が、おかしいことにいつまで経っても識嶋さんが現れない。

気のせいだったのかと首を傾げれば、「んー」と言葉になっていない声が聞こえた。

もしかして具合でも悪くしているのかと心配になり、玄関へと急げば。


「し、識嶋さんっ!?」


玄関扉に背を預け、片膝を立てながら目を閉じている識嶋さんの姿に、私は慌てて駆け寄った。


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