スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
このまま壁と添い寝しそうだと思った私は、グラスをコーヒーテーブルの上に置き、識嶋さんの腕を再度引っ張る。
「部屋に行った方がいいですよ」
このままここで寝ては体も休まらないだろうと提案した。
すると識嶋さんは瞼を重そうに上げて。
「どこだ。連れていけ」
なんとも不安な言葉を添えて命令した。
自分の家の部屋がわからないなんてどこまで泥酔してるんだ。
これはきっと記憶も飛ぶに違いないと予測しながら「わかりました」と答えて、彼の背中に手を添えると歩くように促す。
もちろん足取りはおぼつかず、体重が私へとかかって識嶋さんとの距離が密着する。
普段彼がつけている香りがぐっと近くなり、スーツ越しに感じる体温に私の心臓が騒ぎ出した。
これは介抱しているだけ。
そう言い聞かせながら、識嶋さんの部屋の扉を開ける。
実は、彼の部屋に入るのはこれが初めてだ。
どんな部屋なのかと少しだけワクワクしながら入り口すぐにあるシルバーグレーの近代的なイメージのスイッチに触れてダウンライトを点灯させる。
すると、まず視界を占領したのはキングサイズのベッドだ。