スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
視界にうつる景色が猛スピードで流れて。
私の体はバランスを失い、声を出すこともままならないまま、識嶋さんから香るシトラスの匂いに包まれたベッドに倒れこんでしまった。
いきなり乱暴に扱われて、何か機嫌を損ねることでもしてしまったのかと悩むも、そんな思考は識嶋さんの次の行動できれいさっぱりぶっ飛んだ。
何故か、彼は。
「……あ、の……?」
ベッドに倒れこんでしまった私の上に。
「……なんだ」
覆いかぶさってきたのだから。
少し左向きに倒れている私を見下ろす識嶋さんの瞳は、獲物を捕食するかのごとく真っ直ぐで。
「どいて、ください」
頼んだところで己を見失っているであろう識嶋さんには通じないとは思ったけど、心臓も思考も全てがオーバーヒート寸前の私はそれしか声にすることができない。
持っていたはずのジャケットはいつの間にか滑り落ちていたようで、私の手にはなかった。