スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
Floor 2
私には一生縁がないと思っているものがいくつかある。
それは、世界一周旅行を年に一度は行くことだったり、テレビで特集されるような大家族になることだったりと様々だ。
そして、高級マンションの最上階に住むというのもそのうちのひとつ……だったんだけど……
「ここだ、ここだ」
縁というのは人生に突如として飛び込んでくるようで。
私は今、都内の高級タワーマンションの最上階である47階に立ち、玄関扉の横に備え付けられているインターホンに手を伸ばす社長の隣で胸を高鳴らせていた。
どうやらここが、私が暫くごやっかいになるお家らしい。
中には先日社長が話していたボディーガードだろうか、男の人がいるようで、社長と2人、重厚感のあるダークブラウンに染め上げられた玄関扉が開くのを待った。
ほどなくして、ドアのロックが解除された音がし、三分の一程扉が開く。
私からは姿は見えないけど、対面している社長は「よっ」と軽く手を挙げながら笑みを浮かべた。
「本当にきたんですか」
エントランスのインターホン越しでは聞こえにくいかったけれど、呆れたようなその声はクールだけどどこか優しさがある。
「あったり前だ。ほら、この子が美織ちゃんだ。よろしく頼むぞー」
紹介しながら私を自分の前に押し出すように立たせた社長。
必然と、私の視界には男性が映ったのだけど──
「あっ!」
その姿を見て、驚いた。