スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
識嶋さんの恋人役を演じるならば、と。
優花ちゃんは相馬先輩と繋がりがあるし、下手なことを話しては伝わって混乱を招きかねない。
だから、ここでの正解を私は口にする。
「うん、いるよ」
友達に嘘をついてしまった罪悪感に、胸が小さく痛んだ。
それでも、私は彼との約束を守らなければならない。
友人としても。
彼への気持ちを持ってしまったとしても。
どんな人なのか、どのくらい付き合ってるのか。
結婚の予定はあるのか。
色々と聞かれたけど、全て識嶋さんと事前に打ち合わせした通りの内容で答え行く。
嘘の話を楽しそうに聞いてくれる彼女の顔がまともに見られなくなって。
何だかもう、昨日から頭も心もぐちゃぐちゃだ。
ストーカーのこともあるし、このままでは私の心が悲鳴をあげそうで。
下がる気持ちと共に視線を自分が注文したアイスコーヒーに落とせば、そこに映し出された私の頬に結露が一筋流れた。
まるで、代わりに涙するように。