スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「認めない、あなたには僕がふさわしいんだ」


返事を求めてる様子はなく、自分の世界の中でひたすら自分の想いを吐く。

何度も何度も同じことを繰り返す内山君は、暗い瞳で識嶋さんの後ろにいる私を見つめていた。

様子を見ていた識嶋さんは、内山君が落としたナイフを拾い上げて刃をしまいながら彼を射抜くように睨む。

そして。


「別に認められなくてもらけっこうだ。だが、そんなストーカー行為をしているお前こそふさわしくない」


堂々と言葉を放てば、それまで自分の世界に入り込んでいた内山君の肩がピクリと跳ねた。


「ストーカー? 僕は彼女を見守ってるんだよ」


理解不能。

分かり合うことも不可能。

彼の思考回路の異常さに、私は思わず識嶋さんの背広の裾を強く握ってすがった。


「クズには何を言っても理解できないか」

「僕はクズじゃない……僕はクズじゃない!」


識嶋さんの言葉が癇に障ったのか、内山君は大きな声を出すといきなり識嶋さんに突進してくる。

けれど、襲い掛かる内山君を識嶋さんは再び長い足で蹴り倒し返り討ちにした。


「ありもしないこいつの気持ちを捻じ曲げて美化させてる暇があるなら、自分磨きでもするんだな」


アドバイスともとれるセリフは、痛みに体を痙攣されて呻いている内山君には多分、残念ながら届いてはいないだろう。

とりあえず処分は明日だと告げ、識嶋さんは内山君を放置したまま私を振り返った。



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