スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
もしかして、これは絶好のタイミングなのでは。
今回助けてもらったお礼に、居候させてもらったお礼。
それを込みで何かプレゼントしお祝いするのだ。
思いついたら急に楽しくなってきた私は、帰路を辿りながらどうやってお祝いするかを考える。
識嶋さんと離れるのはとても残念だけど、彼と会えなくなるわけではない。
まだ恋人として役に立たなければならないだろうし……と、そこまで考えたところで私はあることに気付いた。
彼の恋人役を続けるのであれば、まだ居候させてもらっている方がいいのではと。
優花ちゃんは私たちがマンションの中に入っていくのを見ているし、同棲している設定の方が識嶋さんにとって都合がいいのなら出ていかない方がいいかもしれない。
お祝いの時にでも識嶋さんに確認してみよう。
……いてくれと、言って欲しい。
そう願うのはワガママだろうか。
それくらいは許されるだろうか。
彼と私は住む世界が違う。
だから、歩む未来も違う。
結ばれることはないのだから……それくらいは。
駅構内から出て、整備の行き届いている閑散とした夜の広場を歩きながら、濃紺の空を見上げる。
誰ともなしに、許してくださいと心で請いながら。