スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
『昼間は仕事があるが、日が暮れる頃には終わるだろう』
土曜日の予定を尋ねた私に、識嶋さんはそう返した。
どうやら彼は土曜日も仕事で出社するようで、その話しぶりだと自分の誕生日だということを忘れている可能性があって。
ならばサプライズにしようと、相談したいことがあるのでできれば早く帰ってきてくださいとだけ伝えた。
出ていく話はお祝いの後でいい。
もし居候の必要はないと言われてもいいように心の準備もしながら、今夜のメインである紅茶のシフォンケーキを焼く。
その傍ら、ディナーの準備も進めていったのだけど……
何が原因なのか。
ふわふわのシフォンケーキのはずが、焼き縮んでただのスポンジケーキのようになってしまった。
もしかしたら水分が多かったのかもしれない。
焼き直そうかと考えるも、すでに夕方。
そろそろ識嶋さんが帰宅してしまうだろう。
ならば買ってこようかと思い至ったけれど、まだディナーも作り終えておらず。
結局私はケーキを諦め、せめて美味しい夕食を食べてもらおうとフライパンを握りしめたのだった。
そして──
18時を少し過ぎた頃、今日もスマートにスーツを着こなした識嶋さんが帰って来た。