スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「味は平気だと思うんですけど食べますか?」
尋ねながら立ち上がり、シフォンケーキを取り出そうと冷蔵庫を開ける。
すると、識嶋さんはワイングラスをテーブルに置いて。
「お前が作ったものなら不味くても食べてやる」
相変わらずの上から目線で、彼らしくない返事をした。
いつもなら、仕方ないから不味くても、なんて言いそうなのに。
もしかしたらワインが効いてるのかもしれないと、カットしたシフォンケーキを白いお皿に乗せながら考える。
だからうっかり素直に口に出してしまったのだと思うと、少しおかしくて心に余裕が生まれた。
「はい、どうぞ」
生クリームを添えたケーキを彼の前に置くと、私は自分の分のケーキを用意してまた彼の向かいに座る。
「役に立てることがあるなら言ってくださいね。識嶋さんの方も解決するまで協力しますから」
言って、フォークを手にした時。
「……解決したら、戻るのか?」
自分の家に。
そう続けた彼は、手元のケーキと私の間でゆるゆると視線を彷徨わせる。