スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
きっと誰かにドレスを用意するように頼むのだろうが、朝日の差し込む明るいリビングで私は最後の抵抗を試みる。
「心の準備が間に合いません!」
しかし──
「間に合わせろ」
まるで仕事の納期を言い渡すように、冷酷な態度で彼は言った。
正直、誕生日の時のような危うい雰囲気になるのも困るけど、こんなきつい注文を受けるのも辛い。
それにしても、識嶋さんは縁談に関することになると私に厳しくなる気がする。
いや、婚約回避を望んでるのだから協力するのは当然と言われれば当然なんだけど。
それでも……その、私の勘違いでない気持ちを彼が持っているんだとしたら、少し容赦がないというか。
……やっぱり、私の勘違いなんだろうか。
識嶋さんは別に私のことを……とかではなくて、特別は特別でも友人として必要としてくれているだけ、なの?
時間が経てば経つほど何が本当なのか、感じたものが気のせいだったのではと思えてきて。
思わず深い息を吐き出しそうになって堪えた。
とにかく、今は余計なことを考えずに会社に向かおう。
そして、来るべき明日に備えよう。
心に決めると、私は温くなったコーヒーを飲み干してから立ち上がったのだった。