スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「モテモテですね」

「あれで女が苦手になった」


識嶋さんが漏らした本音に私は小さく肩を揺らして笑った。

だから寄って来る女性に対してそっけないのかと納得しながら。

笑う私を見て識嶋さんは少し不服そうに眉根を寄せたけど、昔からモテモテだったんだなと感心しながら着いた部屋は、天井に大きなステンドグラスが飾られたメイン会場だ。

多くのゲストがここに集まっていて、一気に華やかさが増す。

ここからガーデンにも繋がっているようで、開放的な作りになっていた。

生バンドが奏でる優雅な曲を聴き、グラスを片手に笑顔を交し合う人々の中にはテレビで見たことのある有名人の姿もある。

今日はここに優花ちゃんも来ているのかと、不安を持ちつつ視線を巡らせてみた時だ。


「母がいる。行くぞ」


識嶋さんの言葉に心臓が跳ねた。

心なしか彼の表情が固くなった気がして、私はごくりと喉を鳴らす。

識嶋さんに縁談の話を持ってきた人だ。

きっと私の存在を疎ましく思っているだろう。

うまく対応できるか心配ではあるけど、識嶋さんの為にも切り抜けなくては。




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