スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「玲司、こちらのお嬢さんがあなたの言っていた恋人?」
少し低いけれど落ち着きのあるその声に識嶋さんが頷いたところで私はお辞儀をする。
「初めまして。高梨美織と申します」
よけいな事は語らず、自己紹介だけして頭を上げれば、社長が「そうかそうか」と笑って。
「やー、美織ちゃんなら安心して息子を任せられる」
喜びながら識嶋さんの肩を軽く叩いた。
けれど、お母様の方はやはり認められないのか笑みを浮かべることはなく。
流れる微妙な空気をどうしたものかと考えていたら。
「これは識嶋社長。いらしていただけて嬉しいですよ。夫人も、ありがとうございます」
髭をたくわえたダンディな男性が識嶋社長に頭を下げた。
年は識嶋社長と同じくらいだろうか。
と、そこまで観察したところでハタと気付く。
いらしていただけて、ということは。
私が隣に立つ識嶋さんを見上げると、視線に気付いた彼は頷いた。
どうやら正解らしい。
この男性が。
「玲司さんも、またまたお目にかかれて光栄です。それで、こちらの片が?」
「ええ、西園寺社長。彼女が恋人の美織です」
そう、優花ちゃんのお父さんである西園寺社長だ。