スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
私は必死に緊張を隠して笑みを作ると、先ほどと同じように名乗り挨拶をする。
そうすれば西園寺社長は穏やかな笑みを浮かべて。
「なかなかに可愛らしい方ですな。して、どちらのご令嬢で?」
私の素性を尋ねた。
識嶋さんは私らしく堂々と、と言ってくれていたけれど、ここはどう答えるのが正解なのか。
迷い、呼吸を止めた直後──
「彼女の家柄を聞いてどうするんですか?」
識嶋さんが、半歩ほど私より前に出て言った。
声色は至って冷静。
けれど、西園寺社長を見るその瞳はどこか相手を威圧するような強さを秘めていた。
西園寺社長もそれを感じているようだけど負けてはおらず。
「いや、うちの娘との話を断るなら、それ相当の方だろう。ならばきちんと挨拶をしないといけませんからね」
嫌味ともとれるような言葉を返した。
これは識嶋さんも気に入らなかったようで、僅かに目を細める。
「俺が選んだ女性に問題があると仰るので?」
さすがにあるとは言えないのだろう。
西園寺社長が「い、いや」と言葉を濁せば。
「まあまあ、惚気は勘弁してくれ。それより、いい話がありましてなー。あちらでどうです?」
識嶋社長が明るい雰囲気でフォローを入れてくれた。