スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
麦茶だと思ったそれは麦茶ではなく、ウイスキーだったらしい。
喉がカッと熱を持ち、次いで胃も熱くなる。
呑みなれない強いお酒に、これはいけないと冷静でいられたのは最初だけ。
私の体はあっという間にアルコールに支配され、目に映るもの全てを歪ませた。
自分がまともに立てているのかさえ不明瞭。
とにかく壁際に寄り、手をついてふらつく体を支える。
やばい、と。
無意識に唇から声が溢れば、挨拶を済ませたのか識嶋さんが私の隣に立った。
「具合でも悪いのか?」
私の顔を覗き込むようにした彼に頭を振る。
「間違って、お酒を飲んでしまって」
うっかりすれば呂律が回らなくなりそうな中、簡潔に説明すると識嶋さんは呆れたように溜め息をひとつ吐き出して。
「仕方のない女だな。ほら、こい」
私の肩を抱くと、ガーデンスペースのはずれにあるテラスへと誘導した。
人気はなく、パーティーの喧騒も少し遠くに聞きながら、私たちは白いベンチに並んで腰掛ける。
「大丈夫か?」
「大丈夫、です」
左隣に座る彼に答えてみるも、大丈夫そうに見えないのだろう。
識嶋さんは「これ以上は面倒になるから少し休んだら帰るぞ」と言った。
どうやら、恋人の酔っぱらった姿を西園寺社長に見られて難癖つけられると予想したようだ。