スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「笑うな」

「ごめんなさい。……ふふっ」


お酒のせいか、どうしても笑みが零れてしまう私に、識嶋さんは照れながら軽く舌打ちをして。


「お前といると、調子が狂う」


そう、悔しそうに愚痴を漏らしたかと思えば。

識嶋さんの右手が、突然私の後頭部に添えられて。


何も、声にできず。

何も、考える間もなく。


彼の体温の低い唇が、私の唇に重なった。


数秒触れて、ゆっくりと距離ができて。


「……これは、お仕置きか何かですか?」


それでもまだ吐息が触れ合う距離の中問えば。


「……違う」


囁くような声に、酔いが覚めた気がした。

お仕置きでもなく、勘違いでもないのなら。

この行為を、認めてはならない。

私たちの関係を、進めてはならない。


私は識嶋さんから逃れるように彼の胸板を押すも、お酒のせいでうまく力が出ない。

そればかりか、逆に腕を引かれて彼に抱き締められてしまった。



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