スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「理由なんてないです」
「……なら、質問を変える。お前にとって俺は何だ? 恋人役を押し付けたただの上司か?」
「言ったじゃないですか。友達だって」
ひとつ間違えれば想いを口にしかねない空気に流されまいと、私はあえて笑みを浮かべて彼を見つめる。
そして、ソファーから立ち上がる。
このままここにいては、戻れなくなりそうだから部屋に戻ろうと思ったのだ。
けれど……
「俺は、違う。もう違うんだよ」
腕を掴まれて。
「好きだ」
私の体を自分へと引き寄せ、その細く逞しい腕の中に閉じ込めた。
お仕置きだとか、恋人役だからとか、そんな言葉で誤魔化しきれそうにないほどの真剣な声と想いに、私は身動きがとれなくなる。
「お前が好きだよ。高梨」
“美織”ではなく、いつもの苗字で呼ばれて、益々本気なのだと思い知らされてしまって。
逃げ道を塞がれてしまった私は、きつく瞼を閉じた。