スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
Floor 23
──ぽたり。
葉から雨粒が滑り落ちた。
朝から降っていた雨はやみ、夜のお台場は雨上がりの湿っぽい匂いに包まれている。
ところどころにできている薄い水溜りを避けながら帰路を辿る私は、肩から下がる鞄を掛け直すと息を吐いた。
今日は心ここにあらずという言葉がぴったりの1日だった。
社内で識嶋さんと顔を合わせることは何度かあったけど、目を合わせることはできなくて。
うっかり視線がぶつかりそうになると、顔を背けてみたり。
自分からわざと避けるようにしてるくせに、気付けば目は識嶋さんを探していて。
1日中、彼のことが気になって仕方なかった。
仕事でミスをしなかったのは幸いだろう。
そして、定時で上がれたのもまた幸いだ。
昨日、出て行くと識嶋さんに伝えた通り、私はこれから彼の家に最後の帰宅をし、昨夜のうちにまとめた荷物を宅急便で自宅に送るのだ。
その後、自分の家に戻る。
ネオン輝く街中をマンションを目指して重い足取りで歩いていた途中、前から気になっていた少し高そうなレストランに差し掛かった私は、店内、窓際の席に向かい合って座るカップルの光景に目を見張った。