スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
水溜りに気を使う余裕もなく、ライトブルーのエナメルパンプスを汚しながらレストランから離れる。
いつから降り始めていたのか。
やんでいた雨がまたポツポツと落ちてきて。
マンションに着いたちょうどその頃には土砂降りになった。
ギリギリでびしょ濡れになるのを免れた私は、さっき見た2人の姿を思い出しながら玄関の扉を開けた。
「んぅっ!?」
──直後。
突然、口元を塞がれ目を剥く。
引き剥がそうとしたそれは、人の手。
私は背後から誰かによって口を押さえられていた。
声にならない悲鳴が口の中で漏れて、伸ばされている腕を叩いてみるも効果はなく。
背後にいる人物に乱暴に家の中へと押し込まれる。
扉が閉まる音がして、息苦しさを感じる中、背後にいるのは誰なのかと恐怖におののきながら頭をフル回転させた。
心当たりがあるのは、内山君。
そういえば、彼がどこにいるかという確認は曖昧に終わっている。
もしかして、本当に内山君が、と。
そこまで考えたところで、閉まっているリビングの扉に体を強く押し付けられた。
相手は手馴れているのか、私の両腕を後ろでまとめて掴むと手際良く私の口内に布をつめてまともに声を出せないようにする。
そして、用意していたらしいガムテープで後ろ手に巻きつけ動けなくすると、今度は口元にもそれを貼った。