スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
後ろにまとめた手に、足にぐるぐると巻いて。
「予想通りだな。西園寺の差し金か」
信じ難い名を口にした。
西園寺。
お嬢。
そこから導き出され、心当たりがある人物といえば。
優花ちゃん、だ。
彼女が、そんなことをするだろうか。
優しい笑みを浮かべる、あんなに可愛い女性が。
私を襲うように指示をした、なんて。
識嶋さんの髪の毛から水が滴り落ちる。
「彼女をどうするように言われた」
彼の問いに男は答えない。
けれど、無言を許さず識嶋さんは男の頭を床に力いっぱい押し付けた。
「言え。言えば俺が保護してやる。言わないとお前は消されるだろう。あの女に、都合のいいシナリオを用意されてな」
消される。
識嶋さんの言葉に男は、顔を青くして瞳に恐れを滲ませた。
まるで、そうされることに心当たりがあるように。
沈黙が流れたのはどのくらいだったか。
やがて男は観念し、ポツポツと明かす。