スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「どこか痛むところは?」

「大丈夫です」

「そうか。手の方も剥がすぞ」

「はい」


そうして、識嶋さんのおかげでようやく解放された私は、彼に手を貸してもらいながら体を起こして廊下にへたり込んだ。

右の手の甲で頬に流れた涙を拭き取ると、片膝をついて私の様子を伺う識嶋さんに「ありがとうございました」と礼を言う。

彼は「間に合って良かった」と口にしながら、濡れた髪をかき上げ、雨で重くなったジャケットを脱いだ。

そういえば、今までパニックになってて気づかなかったけど、遠くから雨音が聞こえる。

どうやら雨は未だに強く叩きつけているらしく、識嶋さんがこれだけびしょ濡れなのも納得がいった。


「……優花ちゃんと、会ってたんですよね」

「ああ。高梨がいたおかげで、彼女の怪しさに気付けたんだよ」

「私……ですか?」

「外にお前がいることに気づいて、追いかけようと席を立ったんだ。その時、お前と話をしてくると彼女に伝えたら、よくわからない話を振られて執拗に引き留められて……違和感を感じた」



< 181 / 202 >

この作品をシェア

pagetop