スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
Floor 24
震え、力の入らない手を識嶋さんの手が握る。
雨で冷えていた彼の体はすっかりと温かさを取り戻し、その唇から漏れる吐息は熱を持って私の首筋に落ちた。
少し乱れた髪が頬に触れて、ゆっくりと離れると私を見下ろす。
ささやかに色づいた頰と、艶の含んだ瞳。
普段過ごしている時には見られない独特の色気に、めまいがした。
心ごと解され、与えられる愛に揺さぶられ、翻弄されて。
ままならない呼吸で識嶋さん、と名を呼べば返事の代わりに唇を吸われる。
横柄で口が悪いこの人と、肌を重ね合わせる日がくるなんて居候を始めた頃の私には想像もしていなかった出来事。
根は真面目で、照れ屋で、本当は優しいこの人の腕の中で眠れる幸せに、心が満たされていく。
ふたり、シーツにくるまり、どれくらい経ったのか。
ふと目を覚ませば、まだ部屋は薄暗く静寂に包まれていた。
目の前には、穏やかに寝息を立てている識嶋さんの寝顔。
温かくもくすぐったい気持ちに頬が緩む。
識嶋さんを起こさないようにゆっくりと起き上がると、ベッドの横に散らばった2人の服が視界に入った。
剥がされて行く過程を思い出し、気恥ずかしくなるのを振り払うように服に手を伸ばし拾い上げようとした刹那。
「……どこに行く?」
寝起き特有の気怠げな声が私の鼓膜を揺らし、識嶋さんの手が、私の腕に触れて引っ張った。