スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「言ってないですよ」


可愛いな、なんて口にしたら怒られるのは間違いないので堪えてツッコミを入れた。

すると、識嶋さんは誤魔化すように視線をテーブルに落とし、ぶっきらぼうな口調で答える。


「今言ったぞ。で、行くのか?」


デートに行くか行かないか。

そんなの、悩む必要もない。


「行きます!」


初めてのデートの誘いが嬉しくて笑顔になると、識嶋さんは突然私から顔を背けた。


「どうしました?」


何事かと思い、私は向かい側に座る識嶋さんの様子を伺う。

けれど、嫌がるように体ごと横を向いて「見るな」と私を制止した。

そして、一言。


「お前の嬉しそうな顔、心臓に悪いんだよ」


彼の耳が赤くなっている事に気付いた私は、くすぐったい気持ちになりながら、ごめんなさいとなぜか謝ってしまうのだった。






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