スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
──ドキドキしながらデートして、幸せな気持ちのまま夜になれば識嶋さんに抱かれ、満たされて。
夢見心地で月曜日の朝を迎えると、仕事にはあまりプライベートを持ち込まないようにと少し気を引き締めつつ愛用している鞄の中に手帳や資料をつめて会社へと向かった。
社内ではいまだ私と識嶋さんの噂が流れているままで、時折、玉の輿だねーなんて冗談交じりに言われることもある。
玉の輿はさておき、本当に識嶋さんとそんな関係になるなんて、と、ミーティング後の会議室で自然と頬を緩ませた直後にあることに気づいた。
付き合おう。
そんな類の言葉を、聞いてないことに。
「……つまり、曖昧な関係?」
今の私たちの関係がどんなものなのか。
識嶋さんはどう認識しているのか。
ミーティング終了直後から携帯を耳にあて誰かと話す識嶋さんに視線をやり、思わず声を漏らしてしまう程に気になりながらも、自分のデスクに戻ろうと席から立ち上がったその時──
注意力が散漫になったのか、椅子の脚ににつま先をひっかけてしまい、躓き転びそうになった。
けれど、幸いにも近くにいた相馬先輩がよろめいた私の腕を引いて助けてくれて。
「危なかった……ありがとうございます」
「疲れてんのか? 気をつけろよ」
心配されてしまい、再度お礼を述べれば、相馬先輩は気遣うような微笑みを残して会議室から退出した。