スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「美織ちゃんは利用されているだけなのよ」
続く彼女の声も、耳をすり抜けていく。
ただひたすらに立ち尽くす私を、優花ちゃんは思いやるように眉を寄せて見つめていて。
以前見た冷たい眼差しも、素っ気ない態度も、まるで夢であったかのように、目の前の彼女は優しい雰囲気を纏っている。
本当の優花ちゃんはどれなのか。
彼女の話はどこまで信じればいいのか。
幼い頃に読んだ童話に登場する魔女を相手にしているような気分になりながら、どうにか声を絞り出す。
「私が、識嶋さんに騙されてるというの?」
「彼はいずれあなたを捨てる。傷つく前に早く離れた方がいいと思う」
心から心配しているように切なげな声で言われ、私の心が揺らいでしまった。
識嶋さんを疑うつもりはない。
だけど、どこかで優花ちゃんを疑いたくない気持ちもあるのだ。
とにかく、大切なものを失わないよう、惑わされることだけはしまいと、私は優花ちゃんの瞳を真っ直ぐに見つめる。
「私を襲った男の人は、識嶋さんがやったように仕向けるよう優花ちゃんから指示されたって言ってた」
彼女の話の矛盾を突けば、優花ちゃんは頭を振った。