スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


次期社長の登場、しかもイケメンとくれば……当然、女性社員たちの落ち着きがなくなる。

もちろん麻衣ちゃんもテンションが上がったようで、私の隣で小さく黄色い声を出していた。

そんな彼女の声を聴きながら、私は別の意味で落ち着きを失っていた。

まさか、居候先が御曹司の家だなんて。

いや、あの高級なマンションの最上階に住んでるくらいだし、それなりにお金持ちだとは思っていた。

社長と繋がりがあるんだから、何かお仕事で成功してる人なのかな、とか。

だけどまさか、息子だったなんて。

というか、息子の家に私を住ませるとかありなんですか社長!

益々会社の人には言えない状況に自分がいることに気づき、茫然と瞬きを繰り返していたら、バチリと御曹司様と目が合ってしまった。

動揺し、体を強張らせた私に、彼は何事もなかったかのように視線を外する。

……気づいて、ないんだろうか。

もしかして、顔を覚えられていない?

最初の出会いでも覚えてもらってなかったし、その可能性はありかも。

でも、そのうち嫌でも覚えられるはずだ。

同じ家で同じ会社の同じ部署。

さすがに覚えないままじゃないだろう。

とすれば、心配なのは私が居候していることがバレでしまうことだ。

これは早急に口止めをお願いしなければ……!

ファンも増えそうだし、女性社員に睨まれてこれ以上ストレスを増やすのは勘弁だ。

そう思っていたのだけど──


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