スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
Floor 4
群れをなす魚のような帰宅の波もとっくに過ぎた午後22時。
残業後、ビルの隙間から見える夜空には、都会の明かりに負けじと輝く星が浮かんでいる。
それを見上げながら先月新調した大き目のトートバッグを肩にかけ直し、駅へと向かっていた帰り道──
私は、その音に気付いた。
いつの間にか人気がパタリと途絶えた道で、背後から一定の距離をたもつ足音に。
……気のせいかもしれないと思うものの、それでも気になってしまうのはストーカーの存在があるからだ。
もしかしたらつけられてるのかも。
そう思えば、湧き上がる恐怖から逃れるように自然と足早になった。
静かな道に私が鳴らすヒールの音が響く。
震える手でトートバックの持ち手を握り、いまだ一定の距離を保ち追ってくる靴音に心臓が狂ったように騒ぎ出す。
追いつかれたらどうなってしまうのか。
想像するのも怖いもしもの展開が訪れてしまったらと、半ばパニックに陥っていた時──
急ぎ歩く私の横に白いロールス・ロイスのリムジンが止まった。