スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
でも、それでもかまわない。
人を疑い続けながら生きていくよりも、胸を張って綺麗ごとを声にする。
そんな生き方をしていく方がずっといいと思うから。
ただ……それでも、誰かの口から疑いを口にされれば、心が不安に揺れてしまうのは事実。
心を強く持ち続けることの難しさを痛感し、今度は私の方が視線を外して黒い絨毯へと落とす。
赤信号に、車がゆっくりと停車したところで、識嶋さんは小さく息を吐いた。
「そう思いたくないんだろうが、問題が近くにあるのなら手早く対処するべきだろう」
それが自分の為だと告げられ、真っ当な意見に私は落としていた視線を上げる。
「相手が誰であろうとその行為は犯罪だ。許されるものじゃない」
真っ直ぐな目と言葉に、私は「はい」と頷き肯定した。
昼間のミーティングでも思ったけど、基本的に識嶋さんは間違ったことは言ってないのだ。
ただ、言い方に問題がある。
無駄を省きたがる上に結論を急ぐし、何より思いやりがない……というより、見えにくいという方が正しいだろうか。