スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


タワーマンションのエントランスに着くと、借りているカードキーを柔らかなレザーで作られたお気に入りのショルダーバッグから取り出す。

そして、カードリーダーに翳して自動ドアを開けた時だった。

オーバーシルエットジャケットのポケットに入っていたスマホが震えるのを感じて。

もしかしてと思いつつスマホを手に取れば、相手はやはりストーカーだった。


『最近どこに帰ってるの? まさか彼氏のところ?』


君は僕のものだよね。

そう言いたげな文章が、家を出てもなおこうして変わらずに送られてきている。

どこに帰ってるの、だなんて……

完璧に行動監視されてる。

会社もバレてるみたいだし、識嶋さんの言う通り、もっと警戒しないとダメだ。

もう一度警察にかけあってみようかな。

そう考えながら玄関の扉を開けると、部屋の奥の方から識嶋さんの話声が聞こえてきた。

相手の声は聞こえないから電話だろうと予想しリビングに入れば、案の定ソファーに腰を沈めスマホを耳に当てた識嶋さんがいた。


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