スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「それなら断ればいいじゃないですか」
「断るだけで納得するように人じゃない。だから不服だが、お前に頼んでいるだ」
不服って!
そりゃ、私は極上の美人でもアイドルのようにキュートでもないですよ。
特出したものはない平凡な女ですよ。
そう、平凡なんです。
「無理ですよ。立場が違い過ぎて虫よけには役不足です」
「そこは適当に誤魔化せる。問題ない」
ありありですけど!
でも、ここで断ればまたあの家に戻るわけで。
引っ越し金が貯まるまで恐怖と闘い続けなければならなくなる。
怯え、精神をすり減らしながらの生活を送るのか。
それともどう転ぶか予想もつかない偽装の恋人となるのか。
「……必要な時だけ、ですよね?」
「ああ。だが、偽装だとバレないようにある程度は普段から努力する必要はあるだろうな」
その努力の内容がちょっと不安だけど、ストーカーと闘い続けるよりかはきっとマシなはず。