スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
エレベーターの液晶インジケーターが一階を示し、社長と共にエントランスへ向かう。
どうやら社長は少し話がしたいらしく、私をエントランス脇にある来客用の打ち合わせスペースに誘った。
断る理由もないので社長と二人、正方形の白いテーブルを挟み向かい合わせに座る。
「いやー、あいつはあんな性格なもんで友達も少ないようでなー」
……まあ、そうでしょうね。
よくわかります。
相馬先輩も幼馴染としてなんだか苦労してそうな口ぶりだったし。
「いつかはうちを継いでもらう。だから今回も研修としてこっちに勤めさせたんだが……今のままじゃ、人はついてこんだろうな」
さすが父親……というより、経営者だからか。
自分の息子の現状から、会社の未来をしっかりと予測しているようだ。
今のままではダメ。
だからこそ、変えるつもりで息子を日本に呼んだのだろうか。
社長として次期経営者のことを考えて。
確かに、どれだけ識嶋さんが有能で仕事はできても、関わり方があの状態では回りがひたすら疲弊するばかりだ。
しかも彼の特別な立場故、注意してきた人も少ないだろうし……
「だから、美織ちゃんにかけてみようと思ったんだ」
ああ、なるほど。
だから私に……って。
「え?」