スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「真似るならもっと工夫し超えるものを作ってくれないか。まさかそれすらしていないとはな」
淡々とした口調で識嶋さんが言う。
プライドを傷つけられたのか大島さんは両手で机を叩いて、椅子を倒す勢いで立ち上がり。
「ちゃんと僕のアイデアも入れてます!」
アイデアを盗んでいたことをうっかり白状した。
多分バラすつもりは本人にはなかったんだろう。
失態を犯したことに気付いた大島さんは、しまったと言いたげな表情のまま固まって動かなくなった。
……正直、大島さんの提案するプランはいつも真新しさがないとは思っていた。
いや、自分も常に人を驚かせるようなものを練れているわけではないけれど、それでもやはり、見た人が何かを感じてくれるようなただひとつのものをという信念のようなものがある。
だから、大島さんが人が一生懸命作ったものをベースにしてプランニングしている事実はとても残念なことだった。
「プランナーなら自分のアイデアで勝負できないのか。できないのであれば今すぐやめた方がいいな」
歯にきぬ着せない指摘に、大島さんは黙ったままとうとう席を外して会議室から出て行ってしまう。
止める人も追いかける人もいない。
ここにいる誰もが何も言わないのは、識嶋さんの言うことが正しいからだろう。
私も、間違っているとは思っていないけれど。
彼のやり方は結果的に会社に利益をもたらしても、人心は得られないものだ。
容赦ない識嶋さんに、疲れのせいか体にだるさを覚えながら、私は小さくため息を吐いた。