スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「はぁ、さっぱりした」
カジュアルなルームウェアを纏い、バスルームから出る。
まだ微熱はあるけれど、少し良くなっているしもう一度識嶋さんにお礼を言っておこう。
そう決めると、私はまだ乾ききっていない髪をそのままにタオルを肩からかけてリビングへと入った。
けれどそこに識嶋さんの姿はなく、自室にいるのかと彼の部屋の扉をノックしてみるも反応はない。
出掛けてしまったのだろうと結論付けて、私は上質な革のソファーに腰を下ろして頭ごと背を預ける。
リビングに連なる大きな窓枠に切り取られた空の色は抜けるように青い。
こんな日に外に出れないなんてもったいないけれど、今は体調を元に戻すことが先決。
まだわずかに残るだるさを感じ、座り心地の良さに導かれるように目を閉じた。
ここで眠れば嫌な夢は見ないだろうか。
あんな身震いしてしまう夢は二度と見たくない。
少しだけ。
少しここで眠ったらベッドへ移動しよう。
頭の片隅で考えながら、私はまたゆっくりと夢の世界の入り口に向かう。
現実と夢の境界線が曖昧になり思考が溶けていく中、物音が聞こえたような気がしたけれどそれが現実なのかはわからずただ受け止めていたら。
「悪化するぞ」
そんな声と同時、私の頭が緩く左右に揺さぶられて。