スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「よ、良かった……」


自分ではどうにもできないし、勢いで識嶋さんにお願いしたものの、よく考えたらそれくらい自分でどうにかしろとか言われてさらにテンパる事態になっていたかもしれない。

足にとまられた感覚を思い出すと背筋がゾワッと粟立つけど、とれあえずは結果オーライ……


「おい」

「はい」


思考を遮る識嶋さんの声に私は顔を上げて彼を見る。

……ん?

顔を上げて……って!


「近っ!」


叫びながら自分の手元を確認してみれば、なんということでしょう。

私の手は識嶋さんの高そうなスーツのフロントダーツ部分をわしづかみにしているじゃないですか!

しかも、なんかこれ、客観的に見たら私から識嶋さんの腕の中に飛び込んでるみたい見えちゃうんじゃ──


「なっ、お前らそういう関係かっ!?」


ああーっ!

心配した矢先、クライアントのところから戻ってきたらしき相馬先輩に見られたー!

しかもやっぱり誤解されてる!


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