スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「おお! 美織ちゃん!」
低く元気の良い声で私の名が呼ばれたのは、予算の問題も無事にクリアできた戦略会議が終わったばかりの時だ。
昼休憩に入る前に絵コンテ製作の為の資料を取りに行こうと廊下に出たら、バッタリと出くわした。
「仕事、頑張ってるか?」
この気さくな、人好きする人柄と笑顔の持ち主──
「お、お疲れさまです、社長!」
シキシマグループの代表取締役社長、識嶋 篤郎(しきしま あつろう)と。
「昌輝(まさてる)は元気か?」
「先週の電話の声は元気でしたよ」
「そうかそうか」
にこやかに頷いた社長。
昌輝とは私の父の名だ。
実は、社長と私の父は高校の同級生だったらしい。
それを知ったのは面接を受け、採用が決まった後だった。
就職先が決まったと父に報告した時に、父は驚きながらも教えてくれた。
シキシマグループの代表取締役が高校以来の友人なんだと。
その後、たまたま外で夕食を共にとっていた父と識嶋社長に遭遇。
以来、社長とは顔見知りとなり、こうして出会うと声をかけてくれるのだ。