スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


村瀬さんのお料理には敵わないけど、煮込みハンバーグなら得意なので今日はそれを作るつもりだ。

ここに来る車中、識嶋さんの話によると、彼は母親の手料理をもう何年も食べていないらしい。

元々料理が得意じゃないとかで、再婚してからはおかかえのコックさんに任せっきりなのだと話してくれた。

自分が支払うと言う識嶋さんにこれはお礼ですからと丁重にお断りし、必要なものを全て購入したら、再び識嶋さんの愛車に乗り込む。

というか、このポルシェ、絶対2000万とかするやつだ。

前にテレビの高級車ランキングで見たことあるし、仕事で車の資料を集めていた時にも一生縁がないと零しながら眺めていたこともある。

識嶋さんがアクセルを踏み込めば、スムーズに動き出した車。

地下駐車場から出ると、街並みを夕日が眩しく照らしていた。

それにしても……行きもそうだったけど、識嶋さんの車に二人きりというこの状況はやっぱりちょっと緊張する。

行きの時は料理の話でどうにか持ったけど、またしつこく同じ話題はつまらないし……

あ、そういえば、さっきはさりげなく話してたけど、識嶋さんのお母さんは社長とは再婚なんだよね。

もしかして……もしかすると、だけど。

識嶋さんと社長って、血の繋がりが……ない?

正直気になるけど、友達でも恋人でもない私が立ち入っていい軽い話題じゃないし。

いや、一応恋人の設定はもらっているけど、臨時の時のみの嘘恋愛だからやっぱり踏み込んではいけないわけで。



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