スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


チラリと運転する識嶋さんの様子を伺えば、彼は私の視線に気づいてしまったようで「なんだ」とやや不機嫌そうな声を発した。

ここで何でもないといえば、じゃあ何で見てたんだと責めらせそうなので、脳をフル回転させて話題を絞り出す。


「し、識嶋さんって子供の頃は夢とか持ってました?」


や……やってしまった!

再婚の話が頭にインプットされてたせいで、ギリギリの話題を振ってしまった!

でも、今更なかったことにはできないわけで。

とりあえず自分の子供の頃からの夢を語ってみることに。


「私は、いつか満天の星空を見るのが夢なんです」

「いつでも見にいけるだろ」


識嶋さんの言葉はごもっともだけど、そうではないんだと私は頭を振った。


「私の祖母が若いころ、祖父にプロポーズされたのが満天の星空の下だったそうなんです。それを聞いて、子供心ながらに私もいつか大切な人ができたら一緒に見にいきたいなって思って」


本当に大切な、結婚をしたいと思える人と一緒に。

それは大きな夢ではないけれど、小さな頃からずっと胸にあるささやかな夢だ。


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