スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
食材の入った紙袋を手に帰宅した私たちは、さっそく夕飯の準備に取り掛かる。
と言っても、料理は私だけがしていて、識嶋さんはリビングのテーブルでノートパソコンを開き、仕事を始めていた。
……なんかこの光景って、ちょっと同棲してる恋人みたいだな……って、何考えてるの私!
違う違う。
そんなこと考えてる暇があったら、あれよ、あれ!
どうしたら識嶋さんがいい方向に変われるかを考えよう。
何かいいきっかけはないかとハンバーグのタネを手でこねながら思案する。
相馬先輩に相談するのもありだろうか。
それか他にいい友達でもいれば……ああ、そういえば社長が識嶋さんは友達も少ないとか言って──
と、そこまで考えて私は思い立った。
友達!
「それだ!」
目の奥を輝かせ、私は背筋をピンと伸ばす。
「どうした。頭でも打ったか」
私の声が大きかったのか、識嶋さんが怪訝そうな顔で私を見ていたけれど、構わず彼を振り返り。
「友達いりません?」
尋ねてみた。
すると識嶋さんは困惑した様子でさらな眉間に皺を寄せる。
「突然なんだ。本当に頭打ったんじゃ」
「私、立候補します」
彼の話を無理矢理遮って、ハンバーグのタネを掌にのせたまま挙手した。