スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
「美織ちゃん、昼飯は?」
「これからです。その前に資料──」
「それは丁度良かった! ここで会ったのも何かの縁。昼飯、一緒にどうだ?」
いや、縁も何もここはあなたの会社で私は社員で……って、えっ!? 社長と昼食を!?
それはすごくありがたいお誘いだ。
けれど、私のようなヒラ社員が社長と昼食なんておこがましいんじゃ?
なんて驚きながらも思考を巡らせている間にも、社員は私の背中に手を添えて歩くように促している。
さっきから社員の斜め後ろに立っていた秘書の男性は、エレベーターの前に辿り着くと、のりばボタンを押した。
社長の手がぐいぐいと私を押してエレベーターに乗せる。
結局、私は断ることが出来ず、半ば強引に都内にある会社から車で10分ほどの場所にある高級そうな老舗の料亭に連れて行かれた。
「私の奢りだから、値段は気にせず頼んでくれ。ちなみに、ここはこのコース懐石がオススメだぞ」
庭園の眺められる座敷の個室で、指差されたメニューの値段は1万円越え。
気軽に「これにします」とは言えない値段に戸惑っていると、秘書の男性が気を利かせてくれたのか。
「特に好き嫌いがないのでしたらぜひ」
そう言ってくれて。
私はお金持ちの金銭感覚に戸惑いながらもお願いしますと頷いた。