スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


時は識嶋さんの気遣いを目撃してから数時間が経ち、時刻は20時を過ぎた頃。


「いやー、あんたなかなか可愛いね。オレの好みだよ」


私は営業部の人からの依頼でクライアントの接待に同席していた。

老舗料亭の懐石料理に舌鼓をうち、時間と共にお酒の量も増えて。


「どう? 今度二人で飲みに行かないかい?」


いつしかお酒の力で自分を見失ったクライアントの部長さんにからまれている私。


「仕事が忙しいので難しかもしれないですね」


誤魔化してみるも、部長さんは脂の乗った顔を近づけて「仕事熱心なところもいいねー」と上機嫌だ。

営業部の磯山君は苦笑いしているけど、別の人の話相手をしていて助けは期待できそうにない。

どうにか自分の力でこのピンチを抜けないとと考えていた矢先、私の腰に部長さんの手が回ってきた。

そこで、ああ、噂は本当だったと思い知る。

この部長さん、酒癖が悪いと聞いたことがあると磯山君が心配していたのだ。

そして、もしやばそうなら僕がどうにかしますと言ってくれたから同席を了承した。

けれど蓋を開けたらこの展開。

完全にセクハラだ。


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