スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
満足気に笑う部長さんに、泣きたい気持ちをぐっとこらえて愛想笑いを返し仕事の話をして気を反らそうと試みる。
でも、それも堅い話はまた今度と交わされて失敗。
部長さんの手が私の腰をいやらしい手つきで撫でて、背筋がぞわりと粟立つ。
舐めるような目つきと、強引さに軽く眩暈を覚えて。
やめてください。
その言葉が喉から出かけた──その時。
「その手をどかしてください」
背後から耳慣れた声が聞こえ、直後、部長さんが「あいたたたたた!」と叫んだ。
腰から嫌な温もりがなくなり、私は何事かと振り返る。
すると、座椅子を挟み片膝を立ててそこにいたのは。
「うちの社員はホステスじゃないんでね」
まだ会社にいるはずの識嶋さんで。
「な、なんだお前は!」
捻りあげられていた腕を解放された部長さんは、怒りと怯えを混ぜたような表情で識嶋さんを見る。
それに対し、識嶋さんは冷静な笑みを浮かべて名乗る。
「初めまして。彼女の上司で識嶋と申します」
「し、識嶋って……」
「はい、ご想像通りかと思いますよ」
識嶋さんの冷たい笑みに、凍り付いていく部長さん。