スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
磯山君も、他の接待相手も皆、識嶋さんの登場に驚き固まっていた。
私も、その一人だったのだけど。
「出るぞ」
識嶋さんに腕をひかれ、動くことを余儀なくされる。
急ぎ鞄を手に取り、私はまだ状況が呑み込めないまま彼に連れられ店の外に出た。
あまりお酒はいただいてなかったけど、それでも外の空気は私の肌に気持ちよく当たる。
何より、ピンチの状況から抜けられたことが私の心を軽くしてくれていた。
その代わり、疑問が沸いているけれど。
私の腕を離すと車をまわすように電話で伝え終えた識嶋さんに問いかける。
「あの……どうしてここに?」
偶然、彼も仕事の都合でここにいたのか。
それくらいしか識嶋さんがこの店にいる理由が見つからない。
そして、たまたま私たちを見つけて助けてくれた……のかと思ったら。
「それはこっちが聞きたい」
何やら機嫌が悪そうに答えられた。
「どうして俺はここにいるんだ」
「や、だからそれを私が聞いてるんです」
混乱気味の識嶋さんに突っ込みを入れれば。
「孝太郎からクライアントのセクハラ話を聞いた。それで、お前が同席してるって知って……ここに、来た」