スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-

Floor 14



社長室と書かれたプレートが貼られた木製の扉を前に、私は深いため息をひとつ落とす。

なぜここに立っているか。

それは、相馬先輩から、昨日の接待での話が社長の耳に入っていると聞かされたからだ。

呼び出しはかかっていないけれど、謝罪しなければいけない。

そう思い至った私は、一度自分の仕事を切り上げてこうしてここに来たのだ。

タイミング良く、社長は今ここにいると秘書さんから聞いた。

私は心に決め息を吸うと、扉に手の甲を向ける。

と、その時、中から識嶋さんの声が漏れ聞こえて私は扉をノックする寸でのところで動きを止めた。


「……のことは……高梨……悪くありません」


──これ、もしして昨日の?
識嶋さんが責任をとって謝ってるんだろうか。
しかも、私のことをかばってくれてるようにも聞こえる。
だとしたら今ここでお邪魔させて一緒に謝るべきかと迷うも、マナー的にはよくないと思い止まり、私は少し離れたところで識嶋さんが出てくるのを待った。

あまり時間がかかりそうなら一度戻って……と考えていたけれど、待ち始めて五分もしない間に社長室の扉が開いて、エレガントなシルエットのスーツを着た識嶋さんが出てきた。

彼は室内の社長に頭を下げると、静かに扉を閉める。

直後、私が立っていることに気付き、クールな瞳を少し細めた。


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