スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


「何してる」

「社長に昨日のことを謝りに」


答えると、識嶋さんは小さく頭を振る。


「必要ない。お前からの謝罪はいらないと言っていた」


それは、識嶋さんかせそのように取り計らったからではないのか。

口から出掛けた言葉を呑み込んで、私は「わかりました。機会があればその時に謝りたいと思います」と伝える。
そして。


「かばってくださってありがとうございました」


礼を言いながら頭を下げると。


「別に、俺が勝手にやったことだ」


そっけない声が返ってきて、私は元の姿勢に戻り「怒ってました?」と尋ねた。

すると識嶋さんは廊下の壁に寄りかかると、腕を組み四角い窓枠に切り取られた午後の青空を見つめて。


「……喜んでた」


言いにくそうに口にした。


「喜ぶって……何をですか?」


セクハラに負けて逃げた事件のどこを喜んだのか不思議に思い首を傾げれば、識嶋さんは窓から視線を私に向けてからまた反らすと。


「俺の行動をだよ。お前と住んで正解だと言っていた」


気恥ずかしいのかそれを隠すように肩をすくめて微笑んだ。


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