スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-


急に訪れたこそばゆい空気に、私は「そうですか」と声にしてうつむく。

最近、識嶋さんの言葉で変な空気になることが多い気がする。

昨日だって、悪い噂を聞いて心配になったとだけ言ってもらえれば”いい人”で済んだかもしりないのに、お前を嫌な目に合わせたくない、だなんて……


「まあ……俺も、その……否定はしないよ。お前との生活は存外悪くない」


ほら、また。

きっと彼は自分の気持ちを普通に声にしているだけだ。

そこにある好意は恋愛ではないだろう。

でも、言い方と態度がいけない。

元々素直じゃない人だから、うっかり期待してしまいそうになる。


「それは、ありがとうございます」


お礼と、あとは何を伝えればいいだろう。

私も識嶋さんとの生活は嫌じゃない、というのは居候の身でなんだか偉そうだし。

追い出されないように精進します、も何だかふざけてしまっていて違う。

ああ、もう。

これは予想外だ。

識嶋さんがこんな風に私を悩ませるなんて。


< 98 / 202 >

この作品をシェア

pagetop