スイート・ルーム・シェア -御曹司と溺甘同居-
急に訪れたこそばゆい空気に、私は「そうですか」と声にしてうつむく。
最近、識嶋さんの言葉で変な空気になることが多い気がする。
昨日だって、悪い噂を聞いて心配になったとだけ言ってもらえれば”いい人”で済んだかもしりないのに、お前を嫌な目に合わせたくない、だなんて……
「まあ……俺も、その……否定はしないよ。お前との生活は存外悪くない」
ほら、また。
きっと彼は自分の気持ちを普通に声にしているだけだ。
そこにある好意は恋愛ではないだろう。
でも、言い方と態度がいけない。
元々素直じゃない人だから、うっかり期待してしまいそうになる。
「それは、ありがとうございます」
お礼と、あとは何を伝えればいいだろう。
私も識嶋さんとの生活は嫌じゃない、というのは居候の身でなんだか偉そうだし。
追い出されないように精進します、も何だかふざけてしまっていて違う。
ああ、もう。
これは予想外だ。
識嶋さんがこんな風に私を悩ませるなんて。